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ふくしチャンネルレポート

第5回 介護支援ネットの集い パート2

 2回目の今回は、ケーススタディ『介護の困った・悩んだ、あんな時こんな時』と、聞いて触って体験する『必見!誰でもわかる車いすのすべて』の模様をお伝えします。

介護の困った・悩んだ、あんな時こんな時

 介護現場で起こるさまざまな「トラブル」や「ヒヤリ・ハット」。
海外の福祉先進国を視察した経験のある介護・福祉エキスパート「ごんちゃん」が、実例をもとに対応策や解決する際のポイントについて解説しました。

ケース1 立てないのに、歩けないのに動こうとするのは……
DATA
●男性(86歳) 要介護4 脳血管性痴呆
●四肢に麻痺はないものの、下肢の筋力低下は顕著
●理解力、認知力、判断力低下あり
●立位、歩行ともに不可であるが、車いすより立ち上がろうとして何度も転倒している
7名のグループでカンファレンス中。
様々な意見が飛び出し、徐々にヒートアップしていきます。
 
 転倒しないために施設の中で何ができるか、ということをまず話し合いました。なぜ動こうとするのか――その動く要因を考える必要があるということから、その人なりの行動パターンを知るのが重要だという結論に達しました。
この方は男性で、脳血管性痴呆があるということなので、構ってもらいたい要求、不安などから動くのではないでしょうか。

 そこで対応策としては、ベッドからの転倒であれば布団にするとか、それまでの生活歴をみて考えていく。また、不安をもたれることに関しては、他者との関わりから、つまり職員との関係を見直し、信頼関係を築いていこうという方法を考えました。できる限り、抑制はしない方向で、不安を取り除いてあげる対応で解決できると思います。

 言いたかったことは同じことだと思うんですけど、ちょっと難しく考えすぎちゃったかな?
何で立ち上がるのか――というのは、立ち上がりたいからなんですよ。単純にね。
 その要求はどこから来ているのかというと、その人の五感の部分が働いているんだと思います。それによって「あ、行かなきゃ」って本人が認識する。でも、立ち上がれないという認識はないため、転倒してしまう。

 このケースの場合、可能であれば、職員の目が届くように、視野に入るようにすることが一番。必ず立ち上がるときにサインがあるんです。そのサインに職員が気づき、スッと側に行って声をかけることによって抑えられます。そういうことを繰り返すことも対応策の一つだと思います。
 先ほど出たような方法も確かに大切なんですけれど、ケガをさせないようにという面で過度になると、抑制になってしまうでしょう。抑制は絶対に避けるべきですよね。

 人員配置の問題とかいろいろあると思いますけど、基本的に職員の視野に入っているということが一番望ましいかな、と思います。
その理想的な状況に近づけるために、職員配置あるいは職員の動線をどうすればいいか、ということを次に考える必要があると思います。
ごんちゃんPROFILE

埼玉在住
社会福祉士
介護福祉士
ケアマネジャー
くみちゃんの意見

 車いすってお尻が痛くなりません?やっぱり、長い間座っていれば立ちたいと思うのは当たり前だと思うんですよ。そういう時は違ういすに座っていただくとか、そういう配慮があってもいいのではないでしょうか。それから、筋力低下しているということなので、リハビリの方向から訓練していくことも必要なんじゃないかな。

 あるテレビ番組でみたんですけど、職員がケガをさせないという理由で車いすに乗せたまま、あちこち連れまわしていました。私はそれにすごく疑問を感じましたが。
ねこさんの質問
ごんちゃん
アドバイス
 そのことによって利用者さんの満足感が明らかにみえる、ということであればいいと思います。職員サイドの都合ではなく、一緒に職員がいることによってその利用者さんがすごく落ち着いている、ニコニコ笑顔でいるなど。
つまり、発想が利用者サイド、職員サイド、どちらであるかという点が重要なんです。ある意味では連れまわす行為が「身体拘束」になりますから。
ケース2 暴力行為のある入居者への対応はどうすれば?
DATA
●女性(92歳)要介護3 アルツハイマー型痴呆
●歩行ふらつきあるも自立
●失見当識障害、不穏行動、徘徊あり
●昼夜にわたり徘徊、他の居室に入ってしまい、入居者とのトラブル絶えず、クレームも多い。
ちょっとしたことがきっかけで怒り出し、入居者を罵倒、スタッフに対しても噛み付く、殴る、蹴るの暴行あり。
「うちの施設でもあった事例で……」
ベテラン介護者の経験談も参考になっていました。
 
 結論からいいますと、スタッフが個別に対応していってはどうだろうか、という案が出ました。スタッフが毎日ころころ変わるのではなく、3〜4名のスタッフがチームを組んで、その方の担当になる。そうすれば、信頼関係も築けるでしょうし、スタッフのことを認識してくれるのではないでしょうか。

 よくあるケースだと思うんですけれども、ポイントを2つ挙げたいと思います。
まず、いろいろな症状がありますが、それを「問題行動」と捉えるのはやめましょう。あくまでもその人の「パーソナリティ」、「個性」と捉える。おもしろいもので「問題行動」と考えると、やめさせなきゃ!と思うんですよね。これを「個性」と考えると、どう付き合っていくか――に変わるんです。

 もう一点は、私もよく質問を受ける「暴力」について。これも、やめさせるという対応をとるのではなく、初めはちょっと痛いんですけど、スタッフが叩かれてください(笑)。
自分も経験者なんですが、叩かれる時はほとんど背中をパーン!とやられることが多くないですか?そこで「もうちょっと上」とか「もうちょっと下」とか応えてると、やめちゃうんです。嫌になっちゃうみたいなんですね。殴ってやる!っていう気持ちで向かっているのに、いつのまにかマッサージになっちゃいますから。
 うそかと思うかもしれませんが、一度試してみてください。私の教え子もこれで解決できたと言ってますので。
ごんちゃん
アドバイス
さっちゃんの意見
 背中を叩かれるとか、おむつ交換のときにバリバリ引っ掻いてくるくらいの、わかっててやられる時は防ぎようがありますけど。
移乗介護をしようと思ってフットレストを外そうとした時に、バコーン!って顔面をやられたり、そういうこともありますよね。
 そういう方の場合、車椅子の正面にいるっていうことを避けるべきでしょうね。また殴りに来た時、どこに逃げるかということを常に頭においているということと、その瞬間にパッと防御の姿勢がとれるかということも重要ですよ。
ごんちゃん
アドバイス
さっちゃんの意見
 ふだんはおとなしくて、何の問題もない方だとそうもいかないのよねぇ……だからといって、殴り返すわけにはいかないからね(会場爆笑)
 私、叩いたことありますよ。
入浴の時に腕を噛み付かれたんです。どうやっても離さない。悪戦苦闘している時、婦長に鼻をつまんでみて、と言われてやってみましたが、やっぱりダメなんですよ。もう殴っていいからと言われてポカッ!……ようやく離してもらましたが、それでも一週間以上も紫色に腫れていましたね。
ねこさんの体験
ケース3 虐待に気づいた!…でも家族は認めない
DATA
●女性(82歳) 要介護1 老人性痴呆軽度
●ADL自立、DM(糖尿)、高血圧、軽度の尿失禁あり
●家族構成…長男夫婦、孫2人と同居
●食事1日1食で栄養失調状態
●自室は独房状態。青いビニールシートの上に布団が敷きっぱなしで、布団の汚染もひどく、交換している様子はない。
雨戸には釘が打ち付けられており、窓を開けることさえできない。
枕元には水の入った鉄やかんと、いつ食べたかわからない食器(皿一枚)、箸がいつも置かれている。
家族に問いただしても、生きるための最低限のことはしているのだから、他人にとやかく言われる筋合いはない!と取り付く島がない。もともと嫁姑の仲が悪く、家族不和を起こしていたため、本人の存在が家族にとっては邪魔。
本人の手足には、いつも殴打されたような跡がある。時には顔面に大きなあざを見ることも。
●現在は措置入所中
このグループは9名。
様々な職種が真剣に討論し、なかなか意見がまとまりません。
 大体みんなが共通して感じていたことは、措置として入所できたことはよかったな、ということです。
 入所後の対応を検討したんですが、できるだけQOLをより高めるような形で、いきいきとした生活を取り戻してもらえるようにケアしていく。
また、家族に「虐待」という認識がないので、虐待に相当するんだということを、知らしめていく必要もあるでしょう。
何とか家族の方と連絡をとって「あなたたちのお母さんを見てごらんなさい。これだけ元気になられるのに、あなた方はうっちゃっておいたんですよ」というようなことをやっていくともっといいのでは。

 実際、このようなケースに気づいた際、単独の判断をしないことが大事なポイントだろうと思います。その人に関わるありとあらゆる職種を巻き込んでいくことが重要。つまり、チームアプローチですね。
 そして、先ほど出ましたけど、家族に「これだけ元気になる方を放っておいたんだよ」ということを認識させる。何で余計なことをするんだとか、早く死んでもらいたいのに、という開いた口が塞がらなくなるような言葉を返す人もいるんですが。元気になった後、どういう対応をとっていくかということも、難しいところだと思います。
 チームで連携して動いてもダメな場合、人権擁護委員会に訴えるしかないと思うんですね。虐待の認識をさせるためには、一般の我々が動くのではなく法的手段を取るしかない。そうなった場合には、もう絶対に家には帰れないんだということを踏まえた上で、動かなければならないという悲しい現状もありますが……。

 以上、3つの事例について話し合ってきましたけれども、いろいろな考えがあり、答えは一つではありません。今日のケーススタディは結論ではなく、アプローチをかけていく一つの手段であると考えていただければ…と思います。
ごんちゃん
アドバイス
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