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深谷るみ 氏
ケアマネジャー
介護福祉士
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「バラの花束」
深谷氏:ご家族の希望で入所されたAさんのお話です。
Aさん自身は入所に否定的で、スタッフに対する抵抗、他のお客様に対する暴言がひどかったんですが、体験入所を無事終えて契約という段階で、Aさんがとうとうキレてしまったんです。
お話しようとしても、「オレは出て行く!お前らなんかの世話になるか!!」と興奮状態で何も聞いてもらえない。本来、あってはならないことなんですが、私もだんだん感情的になって、「出て行きたいなら、出てけばいいじゃない!好きなように生きればいいわよ!!」って、泣きながら言ってしまいました。
翌日、「契約はきっと無理…クビになるかも」と思いながら出勤しました。
ところが、Aさんはあっけにとられるくらいスムーズに契約されたんです。しかも、驚いたのはそればかりでなく、通常の業務を終えて帰ろうとした私に、真赤なバラの花束まで届けてくれたんです。
「本当は誰かの世話にならなきゃ生きていけないってわかってた。アンタがぶつかってきてくれたのがうれしかったよ。これからはすべてアンタたちに任せるから」とおっしゃってくれました。
「やればできる」
川口氏:グループホームに入所する前、精神科に罹っていたBさんは、昼夜逆転の生活で、暴力行為もあり、家族は介護疲れで倒れる寸前でした。
Bさんは、安定剤と入眠剤を服用していたんですが、昼間寝ていると夜起きるからということで、薬が効いていても無理矢理起こされてしまう……私は、誰のために飲ましているのかと思いましたね。
また、動こうとすると「徘徊だ」と止められ、何かを頼もうと思っても、薬で話すことができない。この状態なら、私だってイライラすると思います。結局、Bさんが何をしたいのか、誰も聞いてないし、考えてないんです。
そこでグループホームでは、Bさんのやりたいことをしてもらい、薬も変えてみたところ、1ヶ月ほどで正常に戻りました。
在宅の場合は家族支援も大切ですけど、利用者本人の状態が良くなっていくことも家族支援に繋がります。
「何のためにやっているのか」ということに対して、見方を変え、関わる人すべてが同じ答えを出せるような状況であるなら、「やればできる」んです。
「無い・ない・ナイ!」
安形氏:在宅では福祉用具の購入費支給がありますけど、病院や施設にはないんですよね。車椅子やクッションなど、その方に適したものを――と要望しても、なかなか買ってもらえないのが現状です。どれだけ声に出しても、買ってくれないし、買ってくれることになったとしても使えるまでに2年くらいかかっちゃう。
それなら自分で作るしかない!と思い立って始めたのが、褥瘡対策のクッション作りなんです。
うちの病院で購入したクッションはヘタってしまっていたので、倉庫に眠っていたオムニマットのサンプルを使って、昼休憩を削ったり、早出したりして縫い始めました。その甲斐あって、患者さんは今、すごく喜んでくれていますよ。
在宅や施設、身体障害者手帳の取得の有無に関わらず、施設でも一人ひとりに合ったものを、もっと楽に購入できるシステムがほしいなぁと思います。そうすれば、現場の士気も高まりますよね。
施設の職員に「介護の質を高めなさい」なんて言うのに、ハードの部分では質を高められないのはおかしい!いくら移乗テクニックを身につけて、多く離床させてあげても、やっぱり道具と一緒にならなければ、質は高められないと思います。
「まちがったがんばり屋さん」
川口氏:ホームヘルパーは、よく勉強会などに参加してがんばっていますが、そこで「実は私、お料理下手なのよね」、「おむつの換え方忘れちゃった」などの会話が聞こえてきます。
その研修を事務所でやってくれないか?という要望まで出て、「おいおい、ちょっと待ってよ」と言いたくなりますね。
専門職としての意識をしっかりと持ってほしいものです。
「ダブルベッド事件」
深谷氏:中堅職員って頭が固いなぁって思いますね。新入職員は若いというのもあって、発想が斬新です。
夜になると、1つのベッドに入って抱き合って寝るご夫婦がいるんですね。微笑ましいでしょ?
柵に肘をぶつけてアザになっていたのを見た若い職員が、「ダブルベッドがあったらいいのに」といったことがきっかけで、みんなでベッドをくっつけてダブルベッドを作ったことがあります。
この発想を「介護ベッドはシングルしかないんだから」と、却下するような中堅職員が実際には多いんですよね。上に立つ者ほど、意見を吸収して現場に反映させていくことが重要です。新しい発想が現場に活かされて初めて、介護の創造性が出るのではないでしょうか。
「バカの壁を越えろ!」
安永氏:ルールを変えるというのは、発想の転換だと思います。
枠をはみ出すとできることなんです。一つのルールしかないと、うちの施設は『こうでなくてはいけない』という風になってしまう。
「できるかも…」の『かも』を考えて、柔軟に新しいものを取り入れていかないと、寂しい介護になってしまうのではないかと思います。
だから「バカの壁を越えろ!」なんです。話してもわからない人に、どうコミュニケーションをもっていくかを考えるのが大事です。こういう人に、言えばわかるというのはありえませんから。
また、「考えられる人(スタッフ)に!」なりましょう。痴呆で転びやすい場合、安易に転ばないようにしようというのではなく、本当に痴呆なのか、どんな痴呆なのかを考えていける人になるべきですよね。
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「かんぱーい!」大阪の医師オットン先生の音頭で交流会スタート。 |
なんと!この日は、どんたく先生のバースデーでした!!
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交流会では、ストレスを出した隙間にパワーを溜められます。 |
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