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「人の暮らしは百人百様ですから、1人ひとりに合った解決法を探るのは簡単なことではありません」 |
オムツフィッターは、(株)排泄総合研究所が2004年9月から始めた認定資格です。排泄ケアの専門相談員として、排泄に関する用具の提案・選定や、アドバイスができる人材の育成を目的に作られました。
研修のカリキュラムは、講義と実習で構成されています(別掲)。
講義で学ぶのは、排泄のメカニズムや失禁タイプなど医学的なことから、排泄ケアの態度と方法など基礎的なことまで多岐にわたります。
「オムツフィッターは、“オムツ”の専門家ではありません。排泄に関する知識をもち、その人らしい生活を支えるための提案者なんです。そのために、排泄に関するいろいろな引き出しを持つことが必要です」と語るのは、講師で同研究所代表の浜田きよ子さん。
排泄はトイレまでの移動や衣服の着脱など、さまざまな動作が組み合わさって成り立っています。つまり、排泄ケアは排泄用具選びではないのです。
例えば、「漏れないオムツはないですか?」という相談に対し、最適だと思われるオムツを提案するだけでは根本的な解決にはなりません。どういう状況で漏れてしまうのか、どうしてオムツが必要なのか、食事や水分の摂取量など、改めて排泄動作や生活状態から問題点を洗い出して、より満足のいく解決法を探ることこそが重要なのです。
そのため、オムツだけではなく、医療や住環境、福祉用具など幅広い知識が必要になります。
「しかし、知識だけを得ると用具や介助の方法論のみを重視しがちです。大切なのは、同じ目線に立って、『こんな方法はいかがですか?』と提案し、一緒にその人らしい生活を作っていくという心構え。排泄ケアを通して、その人の暮らしをより快適なものに変えていく支援をするのがオムツフィッターの役割なんですよ」
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受講者の職種、年齢層はさまざまですが、よりよい排泄ケアを身に付けたいという思いは同じ。 |
一日目の講義終了時、オムツとパッドが配布されました。
「今夜、オムツをつけたまま寝て、翌朝そのまま排尿してください。仰臥位でも側臥位でも座位でも、どのような体位で行うかはお任せします」
今回の受講者はオムツメーカーや介護ショップ、ホームヘルパーなど49名。オムツをつけた経験はあっても、オムツに排尿したことはないという人がほとんどです。
「この体験は、排泄ケアで考えなければならない当事者の気持ちを実感することが目的」と浜田さん。
排尿体験後のフリートークでは、「生温かくて気持ち悪かった」「すぐ取りたい!と思った」「おむつの重さに驚いた」「不安と緊張でなかなか出なかった」「できるだけオムツを当てないで済む排泄ケアを行うべきだ」などの感想がしみじみと語られました。
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「こっちのオムツはどうかな?」「それ、排尿体験したオムツだ」。実験にも熱が入ります。 |
紙オムツの吸収実験テストでは、時間が経つにつれてポリマーが変化していく様子を観察。各種メーカーの吸収状態を比較したり、オムツを破ってポリマーを触ってみたり。
「尿を吸って表面がサラサラになるまで、思っていたよりも時間がかかることを知りました」
この他に、排泄用具の情報館むつき庵を見学したり、オムツの選び方や交換体験、最新のポータブルトイレの特徴などを学びました。
オムツフィッターは2級と3級があります。
3級は排泄ケアに関心のある人なら誰でも受講できます。研修最終日に理解度診断テストを行い、70点以上とれれば合格。これまでに約80人が3級資格を取得しました。
2級は今年から研修を開始。3級取得者が対象で、A、B、Cに区分されている3つの講座を2年以内に受講し、各講座ごとのテストに合格することで認定されます。
現在、研修を実施しているのは京都だけですが、「オムツフィッターの講師になることができる1級の研修を開始した後、今後徐々に増やしていく予定」。
また、浜田さんは「オムツフィッター同士で深いネットワークを作り、これからの排泄ケアを変えていきたいですね」と語っていました。
三大介護の中で、1日のケア回数がもっとも多い排泄ケア。
また、介護される側にとっても心理面における負担の大きいケアです。双方の負担を軽減し、快適な生活を送るために、排泄ケアの専門家は欠かせない資格となりそうです。
研修カリキュラム(3級) |
講義 |
実習 |
・排泄のメカニズム
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・尿、便について
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・失禁はなぜおこるのか? |
・失禁のタイプ
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・便秘のケア |
・褥そうとオムツ |
・排泄支援の態度と方法 |
・排泄に関わる用具とは何だろう? |
・福祉用具選びの総論
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・トイレを使いやすくするために |
・ポータブルトイレの選び方
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・オムツ装着・排尿体験 |
・ポータブルトイレの姿勢保持と移乗 |
・オムツ交換体験と当て方のポイント |
・(むつき庵での)排泄用具選び、
オムツの種類と使い方、軽失禁対応 |
・紙オムツの吸収実験テスト |
・事例でのグループワーク |
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問い合わせ先
■排泄総合研究所 むつき庵=075-803-1122
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