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第7回西日本国際福祉機器展 PPC2005
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車いすがくれるもの 〜もう一度走りたい 犬の世界にも広がるQOL〜
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ふくしチャンネルレポート

ふくしチャンネルレポート
車いすがくれるもの
〜もう一度走りたい 犬の世界にも広がるQOL〜
犬が歩行困難になる疾患には、椎間板ヘルニア、股関節形成不全や膝蓋骨脱臼などの関節の病気、交通事故や落下事故による背骨の骨折、水頭症などがあります。
アメリカでは20年以上前から発売されていたという犬用車いす。日本には10年程前から輸入され、普及してきました。
 
めぐり逢えてよかった
お散歩中のランチくん
お散歩を満喫中のランチくん。
「この車いすはピッタリ合っていて、体の一部になっていると思います」

「いつまでもいっしょに」(文芸社)の著書がある山吹さんの愛犬ランチくんは、6年前に椎間板ヘルニアを発症し、車いす生活を送っています。

「いつものように散歩に呼んでも、歩こうとしなかったんです。足にトゲでも刺さっているのかと様子をみていたら、そのうち立つこともできなくなって……」

 夜明けを待って、急いでかかりつけの病院へ。
すぐにステロイド治療を開始しましたが、効果なく手術に踏みきります。無事成功と獣医師はいうものの一向に回復の兆しは見えず、「あとは気長にリハビリを。家族の努力次第で歩けるようになるでしょう」と、なかばさじを投げられたように1ヶ月で退院。
病院に不信感をもち始めていた山吹さんは、専門医のいる大学病院へランチくんを連れて行きました。そこで受けたのは「ほぼ回復不能」という宣告。

 「薄々治らないのではと感じていたものの、なかなか認めることができませんでした。必ずリハビリで歩けるようになると信じていましたから。なぜランチだけ? これからどうすればいいの?と途方に暮れ、走り回るよそのワンちゃんを見ては、涙がとまりませんでした。
でも、次第に命が助かっただけでもいい!足が動かなくても元気でいてくれたらそれでいい!と思えるようになったんです」

屋内ではおむつを着用
その後、頚椎ヘルニアを再発しましたが、懸命な鍼治療でまた走れるようになりました。
The launch's free worldでは、闘病記録や現在のランチくんの様子がわかります。

山吹さんの願いどおり、ランチくんは元気いっぱい。
下半身麻痺のため、腰を引きずりながらですが、家の中を走り回っています。しかし、お尻や足が床で擦れてしまうため毛が抜け、血まみれに。
 その保護と排泄障害のため、おむつを使っています。 始めはサイズが合わず失敗ばかりしたそうで、外出から帰ってきたら、部屋中おしっこだらけ、その上を歩き回ったランチくんもおしっこだらけになっていたことは数知れず。
試行錯誤の末、現在は犬用より材質がよくて低価格な「人用のおむつにシッポ穴を開けて使っています。内職のような作業で手間はかかりますが、みんなやっているみたいですね」。

 外でも走らせてあげたいとの想いから、山吹さんは車いすを作ることを決意。
「今のようにインターネットも普及していなくて、車いすの情報がほとんどない中、手探りで作りました。初めてランチが私の手を離れて自力で行きたいところに進めた時は、胸が熱くなるほど感動しました。ランチもとてもうれしそうでした」

 日本で市販されている犬用車いすは、内容や費用の面ではまだ今ひとつという山吹さん。現在、ランチくんにはネット友だちが紹介してくれたUSA製の医療用車いすを選んでいます。この車いす、アメリカの病院ではリハビリ用に使用されているそうです。
「人のやさしさ。犬のけなげさ。そして家族の温かさ。ランチが病気にならなかったら気づかなかったたくさんの感動を教えられたと思います。
ありがとう、ランチ。私の長い生涯の中でランチにめぐり合えて本当に良かった」

愛情でできた車いす

2001年6月からインターネット上に開設している「Hiro'sホームページ」の「犬の車椅子」には、車いすの制作に悩む人たちが集まっています。
hiroさんがホームページを開いたのは、愛犬用車いすの自作経験を他の人に活かせればと思ったことがきっかけです。

アドくんの車いすにはバンパーも付いてます
アドくんの車いすは現在2号機。
hiroさんのアイデアで、サスペンションが取り付けられたりと、どんどん改良されています。

アドくんは現在13歳。5歳の時にヘルニアを発病しました。
それからの散歩は、タオルや紐をアドくんの腹部に回し、後ろ足をhiroさんが吊り上げるスタイルに。
「アドも自由がきかず、私も中腰で疲れます。困っていたところ、家内が外国製の犬用車いすのカタログを獣医さんからもらってきたんです」

 カタログの車いすは鉄製のため、アドくんには重過ぎます。しかも、価格は10万円以上。
「高額の治療費を支払った後に、車いすを購入するのはかなりの負担になります。カタログに簡単な構造が記載されていたので、自作してみることにしたんですよ」。

 アルミ材やビス・ナット類、厚手のナイロン生地、ウレタンクッション材などを主な材料に選び、アドくんの体を採寸して簡単な図面を描き、製作に取りかかりました。
「合う車輪を見つけることと、その車輪の取り付けに一番苦労しました。また、サイズ調整のために2度フレームを作り直しましたが、アドは最初の試乗ですぐに慣れ、喜んで走り回ったんです。うれしかったですね」

 Hiro'sホームページを参考に製作された車いすは、把握できているだけで15台以上。
寄せられる相談や悩みに応じ、個別アドバイスも行っています。
「犬の体型・体重は犬種によってさまざまですし、同じヘルニアでも症状もさまざま。愛犬の様子・容態を十分観察して、その犬に合った車いすを作ることが大切です。その手助けと応援ができれば……工夫次第で安価に作ることができちゃうんですから!」

 提供できる情報が増えれば、より簡単に良い車いすを作れるようになるため、ホームページを情報交換の場にするべく投稿を求めています。
その情報提供者から逆に教わることも多いというhiroさん。 自らの経験と情報を活用し、今年1月に初めて前足用歩行器を製作しました。これを含めると、アドくん以外に作った車いすは8台にのぼるそうです。

 こんなhiroさんの人柄と技術に惚れたファンが大勢います。
山吹さんもその1人。「hiroさんの車いすは市販のものより愛情がかかっている分すばらしい! 今の車いすを購入する前にhiroさんと出会っていたら、ランチの車いすはhiroさんと一緒に作っていたと思います」と語っていました。

相棒のララちゃんと一緒にお散歩
相棒のララちゃんと一緒に。同じように芝生を走れて楽しそうです(この車いすは1号機)。

「犬に車いすなんて世も末だ! という批判や、下半身麻痺になったら簡単に安楽死をすすめられたという話を聞いたことがありますが、家族の一員として迎えている以上、飼い主として最後まで面倒を見てあげたいと思うのは当然ではないでしょうか。
アドにもできる限り長生きしてほしいと思います」とhiroさん。

 車いすは、リハビリ用具としての効果も期待されています。
ヘルニアや高齢によって歩行困難であった犬が、車椅子を使用して歩いたことが刺激となり、再び歩けるようになった例があります。また、ペットブームの影響で近親交配などにより、障害のある犬が産まれていますが、ブリーダーによっては「商品」としての価値がないために安楽死させてしまうという話もあるそうです。
「リハビリ用具や車いすを活用することで、大切な命を抹殺しない方法があるということも知ってほしい」とhiroさん。

 北川動物病院の山村院長も「車いすに慣れるとワンちゃんも喜びます。中には笑ったような顔をするワンちゃんもいるんですよ」と、車いすの効用を語っています。

 公園へ散歩に行くと、「がんばってるね!」「犬用の車いすがあるんだ」など、アドくんとhiroさんは注目の的。特にお年寄りや車いすの人たちが、より親近感を持って話しかけてくるそうです。
「きっと、前足だけで一生懸命歩くアドの姿が『自分たちもがんばろう!』という励ましになっているのでしょうね」



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